Session 01 · AI Basics

AIってそもそも
何者?

なぜAIはそんなに賢いのか — 仕組みから理解する

知識ゼロから始める AI入門
© 2026 AI講座1
今日の5テーマ
この回を終えると「AIが何をしているか」が腑に落ちる
1
AIの歴史 — なぜ今なのか
70年の試行錯誤と2020年代の爆発的進化
2
LLMの仕組み — 確率とトークン
テキストが数字になり、確率で「次の言葉」を選ぶ
3
ハルシネーション — なぜ嘘をつくのか
3つのメカニズムと実例・対策
4
Temperature — 答えが変わる理由
「ランダム性」のパラメータを理解する
5
ChatGPT / Claude / Gemini の違い
3大モデルを比較して使い分けを学ぶ
© 2026 AI講座2
AIの70年史①:夢と挫折の繰り返し
1950年代から2010年代——「冬の時代」を2回経た長い旅
1956AI命名ダートマス会議 1974第1次AIの冬予算凍結 1980sエキスパートシステム全盛 1987第2次AIの冬維持コスト問題 2006深層学習Hinton復活 2012AlexNet衝撃画像認識革命 ←冬の時代→ ←冬→
© 2026 AI講座3
AIの70年史②:2017〜2025 爆発期
Transformerの発明から始まった「LLM革命」
2017
Transformer 誕生
「Attention Is All You Need」Google論文。これが全ての基盤。
2020
GPT-3 登場
1750億パラメータ。「文章を書くAI」の衝撃。研究者が震撼。
2022.11
ChatGPT 公開
5日で100万人。2ヶ月で1億ユーザー。史上最速普及。
2023
GPT-4 / Claude 2
司法試験トップ10%合格水準。マルチモーダル対応。
2024
GPT-4o / Claude 3.5
リアルタイム音声対話。コーディング能力が劇的向上。
2025
Claude 4 / o3
AIエージェント時代。自律的なタスク実行が現実に。
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なぜ「今」なのか:3つの収束
計算力・データ・アルゴリズムが2020年代に揃った
3つが同時に揃ったのは人類史上初めて
計算力
GPU/TPUの進化でAI用途の計算コストが過去10年で1,000分の1に低下。大規模な学習が現実的なコストで可能に
📊
データ
Web上のテキストデータが爆増。2020年時点で4.4兆GB超。これを学習データとして活用できる環境が整った
🧠
アルゴリズム
Transformerによるアーキテクチャの革新とRLHFによる人間フィードバック学習。「賢く・安全に」する方法が確立
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LLMとは何か
Large Language Model — 大規模言語モデルの正体
「次のトークンを予測する」マシンに過ぎない
「東京の LLM 確率計算 7000億パラメータ 首都: 85% 駅: 8% 天気: 4% その他: 3% →「首都」を選択
本質を一言で
AIは「思考」も「理解」もしていない。膨大なテキストから統計的なパターンを学び、「次に来やすい言葉」を確率で選んでいるだけ
それなのに賢い理由
Web上の人類の知識の大部分を「次の言葉の確率」として圧縮・記憶している。その圧縮精度が異常に高いため、賢く見える
© 2026 AI講座6
トークン — テキストが数字になる
AIはテキストをそのまま処理しない。まず「トークン」に分割する
例:「東京は日本の首都です」→ トークン分割
東京 日本 首都 です
→ 数値ID: [20929, 1180, 30661, 380, 39591, 2053] として処理
日本語は非効率
英語は1単語≈1トークン。日本語は1文字〜2文字が1トークンになることが多く、同じ内容でも約3倍のトークン数を消費
料金の単位
APIの課金はトークン数で決まる。Claude Sonnetは入力1Mトークン≈$3。長い会話ほど高コスト
コンテキスト上限
AIが一度に「覚えられる」量の上限。Claude 3.5は200,000トークン≈本1冊分を一気に処理できる
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Transformerとは — 「注意」する機構
2017年のGoogle論文「Attention Is All You Need」が現代AIの基盤
「東京の天気は晴れです。東京の人口は…」 東京の 天気は 晴れです 東京の 人口は Attention 0.92 0.05 「東京」に最注目 文脈から関連語を重み付け → 「東京=大都市」の文脈を正確に捉えて次の語を生成
Attentionの革命
従来のRNNは文章を「順番に」処理。Transformerは全ての単語の関係を「同時に」計算。並列処理が可能になり大規模化が実現
なぜ文脈を理解できるか
「東京の天気…東京の人口」という文で2つ目の「東京」が何を指すか、Attentionスコアで正確に特定できる
スケールの効果
パラメータ数が増えるほど、より複雑な関係パターンを記憶できる。GPT-3は1750億、最新は数兆規模
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スケーリング則:大きいほど賢い
パラメータ数・学習データ・計算量を増やすほど能力が伸びる法則
能力 パラメータ数 → GPT-1 117M GPT-2 1.5B GPT-3 175B GPT-4 ~1T+
なぜこれが重要か
「もっと大きく」「もっと多くのデータで」という方向が正しいと数学的に証明。これがLLM開発競争の根拠
「創発」という現象
一定規模を超えると突然「推論・多言語・コード生成」などが出現。これは設計されたものでなく自然発生
限界もある
大きくするだけでは解決しない問題も。「正確性」「最新情報」「推論の整合性」は別のアプローチが必要
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RLHF — AIを「人間らしく」する技術
Reinforcement Learning from Human Feedback:人間のフィードバックで強化学習
プレトレーニング済み GPT-3ベース SFT 人間の回答例で微調整 強化学習 良い回答に報酬 人間アノテーター:回答AとBどちらが良い? → この選好データで報酬モデルを訓練 結果:有害コンテンツを避け、 人間にとって「良い」回答を生成
なぜ必要か
プレトレーニングだけだと「確率的に正しい」が「役に立つ」ではない。人間の価値観にアラインする必要がある
ChatGPTの差別化点
GPT-3にRLHFを適用したのがChatGPT。「会話らしく」「有用に」「安全に」という3要件をRLHFで実現
© 2026 AI講座10
Temperature — 答えが変わる理由
「ランダム性」のパラメータ。0〜1(または2)の数値で制御する
Temperature = 0.1(低い) 首都 92% 駅 5% 3% → 毎回ほぼ同じ「首都」を選ぶ。安定・予測可能 Temperature = 1.0(高い) 首都 55% 駅 28% 天気 → ランダム性が高まり「駅」や「天気」も選ばれうる 低い(0)← 決定論的 創造的 → 高い(2) コード生成: 0.1-0.3 一般会話: 0.7 創作・詩: 1.0-1.5
なぜ毎回答えが違うのか
AIは確率分布からサンプリングしている。Temperatureがゼロでなければ、同じ質問でも毎回違う「くじ引き」をしている状態
実用的な使い方
事実確認・コード生成 → 低く設定。アイデア出し・物語 → 高く設定。ChatGPTの「デフォルト」は約0.7
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ハルシネーション — なぜAIは嘘をつくのか
作り話を自信満々に語る理由は構造的な問題
AIは「正確かどうか」より「それっぽいか」を優先する
Mechanism 1
確率的な補完
「それっぽい続き」を確率で選ぶため、事実確認プロセスがない。「東京の人口は1600万人」が統計的に自然なら生成してしまう
Mechanism 2
知識の混濁
学習データ中の複数の情報が混ざる。「A社のCEO」を聞いたとき、似た文脈のB社やC社の情報が混入して誤答を生む
Mechanism 3
カットオフ後の情報
学習データには期限がある。2024年以降の情報を聞かれると、古い情報や「それっぽい推測」で答えてしまう
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ハルシネーションの実例4パターン
「知っているふり」をするケースを把握しておく
Pattern A · 架空の引用
存在しない論文・書籍を引用
「Smith et al. (2019)によると…」と自信を持って答えるが、その論文は存在しない。著者名・雑誌名・DOIまで作る
対策:学術引用は必ず原文を確認。AIに「論文を探して」ではなく「テーマを説明して」と聞く
Pattern B · 数値の偽造
統計データを自然に作り出す
「日本の〇〇の市場規模は2023年に約3.4兆円」などの数値を自信たっぷりに生成する。ソースなし
対策:数値は必ず公的機関・一次情報で確認。「出典を教えて」と追加で聞く
Pattern C · 人物情報の混濁
経歴・発言を間違える
著名人の経歴を混在させる。「〇〇氏は△△大学出身で…」という紹介に他の人物の情報が混入
対策:人物情報はWikipedia・公式プロフィールで確認。AIの経歴説明を鵜呑みにしない
Pattern D · 法律・規制の誤り
古い・不正確な法的情報
法改正後の正確な条文を答えられない。「〇〇は違法です」という断言が不正確なことがある
対策:法律・税務・医療情報は専門家へ。AIは「概要理解」の補助に限定する
© 2026 AI講座13
コンテキストウィンドウ — AIの「作業記憶」
一度に処理できるトークン数の上限。これを超えると「忘れる」
Context Window (200,000 tokens) System Prompt(指示・役割設定) 会話履歴(ユーザー↔AI の往復) 過去のやりとりが全てここに蓄積される 現在の質問 + 添付資料(PDF・コードなど) ↑ 200,000トークン ≈ 日本語で約30〜40万文字 ≈ 本1〜2冊分
長い会話で「忘れる」理由
コンテキストが上限を超えると古い会話から削除される。「さっき言ったこと」が消えてしまう現象はこれが原因
モデル別コンテキスト比較
ChatGPT GPT-4o:128K
Claude 3.5 Sonnet:200K
Gemini 1.5 Pro:1M(100万)
実践Tips
長いドキュメントをそのまま貼れる。PDF・コードも可。新しいタスクは新しいチャットから始めるのが効率的
© 2026 AI講座14
ChatGPT / Claude / Gemini — 3大モデル比較
それぞれの強みと使い分けを理解する
ChatGPT
OpenAI
Claude
Anthropic
Gemini
Google
コーディング
★★★★★
★★★★★
★★★★☆
長文理解
★★★★☆
★★★★★
★★★★★
日本語品質
★★★★☆
★★★★★
★★★★☆
最新情報
★★★★☆
★★★☆☆
★★★★★
無料枠
GPT-3.5無料
Claude 3 無料
Gemini無料
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企業のAI活用:業種別浸透度
2025年現在、どの業種がどれだけAIを使っているか
業種別 AI業務活用率(2025年調査) IT・ソフトウェア 88% 金融・保険 68% 医療・製薬 58% 製造・物流 52% 小売・EC 44% 教育 35% 飲食・サービス 24%
日本の特殊事情
米国・中国に比べて全業種で5〜15%低い。セキュリティ懸念・ガイドライン不足・リスク回避文化が主な理由
使われている用途TOP3
① 文書作成・メール補助(79%)
② データ分析・レポート(61%)
③ コード生成・レビュー(48%)
© 2026 AI講座16
AIが「できること」と「まだ難しいこと」
過大評価も過小評価もせず、正確に把握する
✓ AIが得意なこと
大量テキストの要約・分類・翻訳
コード生成・デバッグ・リファクタリング
アイデアのブレスト・構造化
文章の校正・スタイル調整
パターン認識・異常検知(大量データ)
24時間対応のカスタマーサポート
複数言語での同時対応
✗ まだ難しいこと
リアルタイムの最新情報の取得(Web検索なし)
長期記憶(会話をまたいだ文脈保持)
物理世界との直接インタラクション
因果推論の確実性(相関は見えるが因果は難しい)
完全な数値計算精度(複雑な算術は誤る)
独自の創造(ゼロから革新的アイデアを生む)
責任の引き受け・倫理的な最終判断
© 2026 AI講座17
AIを使う際の3つのリスク
リスクを知って、賢く使う。無知が最大のリスク
01
著作権・知的財産
AIが生成したコンテンツが既存著作物に類似する可能性。学習データの著作権問題も未解決
対策:生成物の二次利用は確認。商用利用の場合は特に慎重に。AIの説明した「事実」は独自に確認
02
個人情報・機密情報
AIへの入力は学習に使われる可能性がある(サービスによる)。顧客情報・社外秘情報を貼り付けると情報漏洩リスク
対策:機密情報は匿名化・抽象化してから入力。API利用またはプライベートモードを活用
03
依存・スキル退化
AIに頼りすぎると、自分で考える・書く・判断するスキルが低下する。批判的思考力の退化が最大の長期リスク
対策:AIの出力を検証する習慣を持つ。「なぜその答えか」を問い続ける。補助として使い、思考を委ねない
© 2026 AI講座18
🔬 Workshop — 同じ質問を3つのAIに投げる
自分の目で違いを確認する(30分)
質問A — 事実確認型
「日本の2024年のGDPは何位ですか?」
→ 正確性・情報の新鮮さ・引用の有無を比較
質問B — 文章生成型
「新入社員への歓迎メールを書いてください」
→ 文体・長さ・丁寧さ・独自性を比較
質問C — 推論型
「ペットボトルのリサイクル率を上げるには?」
→ 思考の深さ・構造・独自性を比較
質問D — 自分の課題
「自分が今抱えているビジネス課題を入力」
→ 最も役に立ったのはどれか
📝 記録シート:各AIの回答に点数(1-5)をつけ、「どこが違うか・なぜ違うか」を書く
© 2026 AI講座19
そもそも「AI」は1つじゃない — 3つの分類
識別・予測・生成。ニュースで「AI」と呼ばれるものを切り分ける
Type 01
識別するAI
画像・音声・文章を「分類」する。猫か犬か、スパムか否か、ポジティブかネガティブか。最も実用化が進んだ領域
例:顔認証・不良品検知・迷惑メール判定
Type 02
予測するAI
過去のデータから「次」を当てる。需要予測・株価・故障予知。数値・時系列を扱う伝統的な機械学習の主戦場
例:売上予測・与信スコア・離反予測
Type 03 ← 本講座
生成するAI
文章・画像・音声・コードを「作り出す」。ChatGPTやClaudeはここ。2022年以降に爆発的に普及した最新領域
例:文章作成・画像生成・コード生成
© 2026 AI講座20
機械学習の「3つの学び方」
AIはどうやって賢くなるのか — 学習の種類を知る
① 教師あり学習
Supervised
「問題」と「正解」のペアを大量に与えて学ぶ。猫の写真に「猫」というラベルを付けて教える。最も一般的
スパム判定・画像分類・翻訳
② 教師なし学習
Unsupervised
正解を与えず、データの中の「構造・かたまり」を自分で見つける。似た顧客のグループ分けなど
顧客セグメント・異常検知
③ 強化学習
Reinforcement
「報酬」を最大化する行動を試行錯誤で学ぶ。ゲームAIやロボット制御。ChatGPTのRLHFもこの一種
囲碁AlphaGo・RLHF
© 2026 AI講座21
ニューラルネットワーク — 脳を真似た計算
「ニューロン」を層状に繋ぎ、数字を変換していく仕組み
入力層 隠れ層(複数) 出力層 各線に「重み」があり、学習でこの数値が調整される
ニューロン=単純な計算器
入ってきた数字に「重み」を掛けて足し、変換して次へ渡す。1個1個は単純だが、何億個も繋がると複雑な判断ができる
「学習」とは重みの調整
答えを間違えるたびに、線の重みを少しずつ修正する。これを何兆回も繰り返して「正解に近づく」
© 2026 AI講座22
ディープラーニングの「ディープ」とは
層が「深い」から深層学習。深さが表現力を生む
層を重ねるほど抽象的な概念を捉えられる
浅い層
点・線・色
最も基本的な特徴を検出
中間層
目・鼻・耳
パーツを組み合わせる
深い層
顔・物体
意味のある対象を認識
出力
「猫です」
最終的な判断
© 2026 AI講座23
「学習」と「推論」— AIの2つのフェーズ
作るときと使うとき。コストも時間もまったく違う
Training / 学習
AIを「作る」工程
膨大なデータで重みを調整する。GPT-4クラスで数ヶ月・数十億円・数千枚のGPUが必要。一度きりの大工事
⏱ 期間:数週間〜数ヶ月
💰 コスト:数億〜数百億円
🏭 担い手:OpenAI / Google等
Inference / 推論
AIを「使う」工程
完成したAIに質問して答えを得る。私たちが毎日ChatGPTを使うのはこれ。1回あたり数円〜数十円
⏱ 時間:数秒
💰 コスト:1回 数円〜
🙋 担い手:私たちユーザー
© 2026 AI講座24
埋め込み(Embedding)— 言葉を「座標」にする
AIは意味を「ベクトル(数字の並び)」として扱う
王様 女王 男性 女性 りんご 王様 − 男性 + 女性 ≒ 女王
意味が「近さ」になる
似た意味の言葉は近い座標に配置される。「犬」と「猫」は近く、「犬」と「自動車」は遠い。意味を数学で扱える
検索・推薦の基盤
この仕組みが意味検索・レコメンド・RAG(後述)を支える。AIが「言葉の意味を理解しているように見える」核心
© 2026 AI講座25
事前学習(Pre-training)— 世界の知識を詰め込む
インターネット規模のテキストを「穴埋め問題」で学ぶ
学習方法:次の単語を当てる「穴埋め」を延々と繰り返す
「吾輩は猫で ある ← これを当てられるよう重みを調整
データ規模
Webページ・書籍・論文・コードなど数兆トークン。人類の知識の大部分
なぜ賢くなるか
「次の語」を当てるには文法・事実・論理を暗黙に学ぶ必要がある。結果として知識が宿る
カットオフ
学習データには締切日がある。それ以降の出来事は「知らない」状態になる
© 2026 AI講座26
ファインチューニング — 専門家に育てる
汎用モデルを、特定の用途・口調・知識に「微調整」する
汎用 → 専門
「何でも屋」のベースモデルに、自社の問い合わせ履歴や専門文書を追加学習させ、特定分野に強くする
プロンプトとの違い
プロンプトは「その場の指示」、ファインチューニングは「体質を変える」。後者はコストと専門知識が必要
使いどころ
独自の文体での大量生成、専門用語の多い業界、決まったフォーマットの厳守などで効果が出る
まず試すべきは
多くの課題はプロンプト工夫やRAGで解決できる。ファインチューニングは「最後の手段」と考えてよい
© 2026 AI講座27
マルチモーダルAI — 文字だけじゃない
画像・音声・動画も「理解」し「生成」する時代へ
📝
テキスト
文章の理解・生成・翻訳・要約
🖼
画像
写真の説明・図表の読み取り・生成
🎤
音声
文字起こし・リアルタイム会話
🎬
動画
内容理解・テキストから動画生成
© 2026 AI講座28
画像生成AIの仕組み — 「ノイズ除去」で描く
拡散モデル(Diffusion):砂嵐から徐々に絵を浮かび上がらせる
純粋なノイズ ぼんやり 輪郭が出る 完成画像 「猫の絵を描いて」という指示に沿ってノイズを除去
代表サービス
Midjourney・DALL·E・Stable Diffusion・Adobe Firefly。文章(プロンプト)で画像を指示する
ビジネス活用
広告バナー・商品モック・SNS素材・プレゼン挿絵。制作コストを劇的に圧縮できる
© 2026 AI講座29
AIエージェント — 「自分で動く」AI
指示を受けて、計画し、ツールを使い、自律的にタスクを完了する
「答える」から「やり遂げる」へ
従来のチャット
「〜について教えて」→ 答えを返す。実行は人間がやる。一問一答で完結
AIエージェント
「競合を調べて比較表を作り、メールで送って」→ ①計画 ②Web検索 ③表作成 ④メール送信 を自分で順に実行。人は承認だけ
© 2026 AI講座30
RAG — AIに「カンニングペーパー」を渡す
検索拡張生成:社内文書や最新情報を参照させて答えさせる
質問 ①関連文書を検索 社内DB・文書 ②文書+質問をLLMへ 根拠付き回答
ハルシネーション対策
「知っているふり」を防ぐ。実際の文書を根拠にするので、出典付きで正確に答えられる
社内AIの定番
社内マニュアル・規定・FAQをRAGで参照させる「社内チャットボット」が今いちばん普及している活用法
© 2026 AI講座31
推論モデル — 「考えてから答える」AI
o1・o3・Claude thinking:答える前に内部で熟考する
従来モデル
即答型
質問されたら瞬時に答える。簡単な質問は速くて良いが、複雑な数学・論理・多段階の問題で間違えやすい
推論モデル
熟考型
答える前に「下書き思考」を何手も展開し、検証してから回答。数学・コーディング・複雑な戦略立案で精度が大幅向上。その分 時間とコストはかかる
© 2026 AI講座32
オープン vs クローズド — 2つの陣営
「公開モデル」と「非公開モデル」、どちらを使うか
Closed / 非公開
ChatGPT・Claude・Gemini
中身は非公開。APIやアプリ経由で使う。最高性能。手軽だがデータを外部に送る
○ 最高品質・運用不要 △ 月額/従量課金
Open / 公開
Llama・Mistral・Gemma・DeepSeek
モデルが公開され、自社サーバーで動かせる。データを外に出さずに済む。運用には技術力が必要
○ データ秘匿・カスタム自由 △ 自前運用が必要
© 2026 AI講座33
AIを支える「お金」と「GPU」
なぜAIはこんなに話題で、なぜNVIDIAが世界一になったのか
GPU
AI計算の心臓
大量の並列計算が得意。元はゲーム用の画像処理チップがAIの主役になった
$3T
NVIDIA時価総額
AI需要でGPU独占企業が世界最大級に。「ツルハシを売る」立場
電力
巨大な消費
データセンターの電力・水・環境負荷が新たな社会課題に
© 2026 AI講座34
AIバイアス — 「学習データの偏り」が映る
AIは社会の偏見をそのまま、時に増幅して学んでしまう
なぜ起きるか
学習データ(=過去の人間社会)に偏りがあれば、AIもそれを学ぶ。「医者=男性」のような固定観念を再生産しうる
実害の例
採用選考・与信審査・顔認識で特定の属性に不利な判定をした事例が報告されている
使う側の心得
AIの判断を「中立で客観的」と信じ込まない。重要な意思決定は人間が最終確認する
対策の方向
学習データの多様化・出力の監査・人間によるレビュー。「公平性」はAI開発の最重要テーマの一つ
© 2026 AI講座35
入力したデータはどこへ行く?
「学習に使われる/使われない」の境界を理解する
無料の個人版
入力が学習に使われる場合がある(設定でオフにできるサービスも)。機密情報の入力は避けるのが安全
法人/Team/Enterprise
多くは「入力を学習に使わない」と規約で明記。業務利用はこちらを契約するのが原則
API利用
原則 学習に使われない。自社システムに組み込む場合の基本。利用規約は必ず確認する
© 2026 AI講座36
世界のAIルール作り
「自由に使う」から「責任を持って使う」フェーズへ
EU
EU AI Act
世界初の包括的AI規制。リスクに応じて4段階で規制。「許されない用途」を明確に禁止
日本
ガイドライン中心
厳格な規制より「イノベーション促進」を重視。事業者向けガイドラインで運用
米国
大統領令+州法
連邦の方針と、カリフォルニア等の州独自ルールが並走。流動的に変化中
© 2026 AI講座37
生成AIと著作権 — 3つの論点
まだ世界中で議論中。だからこそ「慎重さ」が武器になる
A
学習データの著作権
既存の著作物で学習することの是非。各国で訴訟・立法が進行中
B
生成物の権利
AIが作ったものに著作権は認められるか。「人間の創作的寄与」が鍵
C
類似・侵害
既存作品に酷似した生成物のリスク。商用利用前にチェックを
© 2026 AI講座38
ディープフェイクと偽情報
「見たもの・聞いたもの」を信じられない時代の守り方
リスク
本人そっくりの偽動画・偽音声で詐欺やなりすまし。経営者の声を真似た「振り込め詐欺」も発生
守り方
「動画=証拠」と思わない。重要な指示は別経路で本人確認。社内に合言葉・確認ルールを設ける
© 2026 AI講座39
AGI(汎用人工知能)とは何か
「特化型」から「何でもできるAI」へ — どこまで本当か
現在のAI=特化型
特定タスクは得意でも、人間のように「あらゆる課題に柔軟に対応」はまだできない
AGI=人間並みの汎用性
人間ができる知的作業を全般的にこなすAI。実現時期は「数年」〜「数十年」まで専門家の見解が割れる
過熱に注意
「もうすぐAGI」という宣伝は投資を集めるための面もある。冷静に距離を取って情報を読む
私たちの構え
来るか分からない未来より、「今 使える道具」を使いこなす方がはるかに価値がある
© 2026 AI講座40
AIは仕事を奪うのか
「奪われる」ではなく「変わる」。歴史が示すパターン
なくなる作業
定型的なデータ入力・単純な文章作成・一次対応など「ルール化できる作業」から置き換わる
価値が上がる
対人の信頼・最終判断・創造の方向付け・AIを使いこなす力。「AIに指示する側」の価値が高まる
結論
「AIに置き換わる人」ではなく「AIを使う人に置き換わる」。本講座のゴールはまさにここ
© 2026 AI講座41
AIへの「5つのよくある誤解」
この誤解を解くだけで、AIとの付き合い方が変わる
❌「AIは何でも知っている」
✓ 学習データの締切後は知らない。確率で「それっぽく」答えるだけ
❌「AIの答えは正しい」
✓ 自信満々に間違える(ハルシネーション)。検証は必須
❌「AIは考えている」
✓ 思考はしていない。次の単語を確率で選んでいるだけ
❌「AIは人間を超えた」
✓ 特定タスクは超えたが、汎用的な判断・責任は人間のもの
❌「専門家しか使えない」
✓ 日本語で話しかけるだけ。今日から誰でも使える
© 2026 AI講座42
AIを作った人たち
名前を知っておくと、ニュースの解像度が上がる
アラン・チューリング
「機械は考えられるか」を問うた計算機科学の父。チューリングテストの提唱者
ジェフリー・ヒントン
「深層学習の父」。2024年ノーベル物理学賞。AIリスクの警鐘も鳴らす
サム・アルトマン
OpenAI CEO。ChatGPTを世に送り出し、AIブームの象徴的存在
ダリオ・アモデイ
Anthropic CEO。「安全なAI」を掲げClaudeを開発
© 2026 AI講座43
AI用語ミニ辞典 ①
ニュースや会議で出てくる言葉を、一言で押さえる
LLM 大規模言語モデル。ChatGPTなどの本体
トークン AIが扱う文字のかたまり。課金単位
プロンプト AIへの指示文。次回のメインテーマ
ハルシネーション もっともらしい嘘
Temperature 答えのランダム性の強さ
コンテキスト 一度に扱える情報量(作業記憶)
パラメータ AIの「重み」の総数。規模の指標
マルチモーダル 文字+画像+音声を扱う
© 2026 AI講座44
AI用語ミニ辞典 ②
一歩進んだ言葉。知っていると会話で差がつく
RAG 文書を参照して答える仕組み
エージェント 自律的にタスクをこなすAI
ファインチューニング 追加学習で専門化
RLHF 人間の評価で行儀を整える
埋め込み 意味を座標(数値)にする
推論モデル 考えてから答えるAI
API システムからAIを呼ぶ窓口
オープンモデル 自社で動かせる公開AI
© 2026 AI講座45
もう身の回りにあるAI
気づかないうちに、私たちは毎日AIを使っている
📱 スマホ
顔認証・予測変換・写真の自動分類・音声アシスタント
🛒 買い物
ECのおすすめ商品・動画配信のレコメンド・価格最適化
🗺 移動
地図の最短ルート・配車アプリ・渋滞予測
💳 金融
不正利用の検知・与信審査・株の自動取引
📧 仕事
メールの迷惑判定・自動返信案・議事録の文字起こし
🏥 医療
画像診断の補助・創薬・問診の整理
© 2026 AI講座46
AIが「うっかり間違える」典型
クセを知れば、どこを疑えばいいか分かる
単純な計算・桁数
大きな数の掛け算や桁の数え間違いをする。重要な計算は電卓・表計算で検算する
最新の出来事
学習締切後のニュースは知らない。Web検索機能付きを使うか、自分で確認する
固有名詞・細かい事実
人名・日付・数値・URLは混濁しやすい。一次情報で裏取りする
「知らない」と言えない
分からなくても答えを作る傾向。「分からなければ分からないと言って」と指示すると改善する
© 2026 AI講座47
AIニュースに振り回されないために
毎日大量に流れる「すごい!」「危険!」を冷静に読む
① 誰が言っているか
開発企業の宣伝か、独立した検証か。「販売側のポジショントーク」を割り引く
② デモか実用か
「できた事例」と「安定して使える」は別。再現性・条件を確認する
③ 自分に関係あるか
全部追う必要はない。「自分の仕事を楽にするか」だけで取捨選択してよい
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よくある質問 ①
受講前に多くの人が抱く疑問に答える
Q. AIに仕事を奪われませんか?
A. AIに奪われるより「AIを使う人」に奪われます。だからこそ今、使い方を学ぶ価値があります
Q. 無料版で十分ですか?
A. お試しには十分。ただし業務利用なら、最新モデルとデータ保護のある有料/法人版を推奨します
Q. プログラミングは必要ですか?
A. 不要です。日本語で話しかけるだけ。本講座も非エンジニア向けに設計しています
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よくある質問 ②
使い始めてから出てくる疑問
Q. どのAIを使えばいい?
A. まず1つを毎日使うのが上達の近道。迷うなら ChatGPT か Claude から。慣れたら用途で使い分け
Q. 答えが毎回違うのはなぜ?
A. Temperature(ランダム性)のため。仕様です。安定させたいときは「箇条書きで」など形式を指定する
Q. 機密情報は入れていい?
A. 個人の無料版には入れない。法人契約・API・匿名化が原則。社内ルールを必ず確認
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🧠 ミニ確認クイズ
今日の内容、どれくらい入った?(答えは次のスライド)
Q1. LLMは何をしているマシン?
a) 検索 b) 次のトークンの確率予測 c) データベース照会
Q2. AIが自信満々に嘘をつく現象の名前は?
a) バグ b) ハルシネーション c) オーバーフロー
Q3. 答えのランダム性を決めるパラメータは?
a) Temperature b) Token c) Context
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✅ クイズの答え
全部わかったら第1回は完璧です
Q1 → b 次のトークンを確率で予測している。検索でもDBでもない
Q2 → b ハルシネーション。構造的に起きる。検証が対策
Q3 → a Temperature。低いと安定、高いと創造的
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今日からできる「最初の一歩」
知識を行動に変える。小さく始めるのがコツ
1
アカウントを作る
ChatGPTかClaudeに無料登録。まず触れる環境を持つ
2
毎日1回 質問する
仕事の小さな疑問を投げてみる。慣れが一番の上達法
3
答えを疑う
「本当?」と一度検証する習慣。これだけでリスクが激減
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次回予告:第2回「AIと上手く話す技術」
今日学んだ「仕組み」を、いよいよ「使い方」へ
プロンプトの型
良い指示の出し方。役割・文脈・形式の指定で出力が激変する
悪い例→良い例
同じ質問でも、聞き方で答えの質が何倍も変わる実例
使えるテンプレ集
メール・要約・企画・翻訳。明日から使える雛形
宿題
3つのAIに同じ質問を投げて、違いをメモしてくる
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ここまででAIの「正体」が見えた
次のスライドで、第1回の要点を5つに凝縮します
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AIと付き合う「3つの心構え」
技術の前に、姿勢が成果を決める
🤝 相棒として
魔法でも脅威でもなく「優秀だがミスもする部下」。指示し、確認し、育てる関係
🔍 検証者として
最終判断は自分。AIの答えを鵜呑みにせず、根拠を確かめる癖をつける
🚀 実験者として
完璧を待たず、まず試す。失敗しても損は少ない。触った量がそのまま実力になる
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1枚で振り返る「AIの全体像」
今日の点と点が線でつながる
大量データ事前学習 LLM確率予測 RLHF人間に整える プロンプト私たちの指示 次回は右端「プロンプト」を深掘りします
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もっと学びたい人へ
無理に全部見なくてOK。気になったものから
公式ヘルプを読む
各サービスの公式ガイドが最も正確で最新。まずはここから
触りながら学ぶ
本を読むより1問質問する方が早い。手を動かすのが最短
社内で共有する
使えたプロンプトをチームで共有。組織全体の底上げになる
この講座を見返す
用語に迷ったら本資料の「ミニ辞典」へ。いつでも戻れる
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第1回総まとめ
最後に、今日のすべてを5つに凝縮します
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第1回まとめ:今日の5つのキーテイクアウェイ
この5つを理解した人は、AIを「怖いもの」から「使えるもの」に変換できた
01
AIは「次のトークンを予測する確率マシン」
思考・理解はしていない。だからこそハルシネーションが起きる
02
Transformerとスケーリング則が「今のAI」を生んだ
3つの収束(計算力・データ・アルゴリズム)が2020年代に初めて揃った
03
Temperatureが「毎回違う答え」を生む
ランダム性パラメータを理解すれば用途別に使い分けできる
04
ハルシネーションは「構造的な欠陥」
パターンを知っていれば被害を防げる。検証習慣が最大の対策
05
ChatGPT / Claude / Gemini — 使い分けが重要
コーディング・長文・最新情報でそれぞれ得意不得意がある。次回→上手な話し方を学ぶ
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